委託契約について

排出事業者責任

 廃棄物処理法では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と規定して、排出事業者の処理責任を明確にしています(法第3条第1項)。これは排出事業者責任と呼ばれ、廃棄物処理の重要な原則になっております。
 しかし、産業廃棄物の排出量が多く、排出状況も安定して、処理施設の確保または維持管理が容易である場合は、排出した廃棄物を自ら処理して効率的に進めていくことが可能ですが、そうでない場合には、都道府県知事または保健所設置市長から許可を受けた処理業者等に委託して処理する必要があります。このような状況において、排出事業者責任をまっとうするためには、排出事業者と処理業者の間で適正な委託契約を結ぶことが求められます。


委託基準

 適正な委託契約を結ぶためには、法で定める委託基準に従うことが必要です。
 委託基準には次のものがあげられます。(法第12条第3項〜第5項、令第6条の2、規則第8条の4の2等)

  • 処理を委託する相手は処理業の許可を有する(または施行規則第8条の3に定める)者であること。(令第6条の2第1項、第2項)
  • 委託する業者は、委託しようとする産業廃棄物の処理が事業の範囲に含まれていること。(令第6条の2第1項、第2項)
  • 委託契約は書面で行うこと。(令第6条の2第3項)
  • 特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合は、委託する者に対してあらかじめ特別管理産業廃棄物の種類、数量、性状、荷姿、取り扱い上の注意事項を書面で通知すること。(令第6条の6第1号)
  • 契約書及び契約書に添付された書類を契約終了日から5年間保存すること。(令第6条の2第4号、規則第8条の4の3)
  • 収集運搬の委託は収集運搬業の許可を持つものと、中間処理(再生を含む)または最終処分の委託は処分業の許可を持つものと、それぞれ2者間で契約すること。(法第12条3項)

添付すべき書面

委託契約書面には、以下の区分に応じて書面を添付することが義務付けられています。(令第6条の2第3号および規則第8条の4)


[1] 運搬に係る委託契約書
  • 産業廃棄物収集運搬業の許可証の写し
  • 再生利用に係る環境大臣の認定証の写し
  • 広域的処理に係る環境大臣の認定証の写し
  • 無害化処理に係る環境大臣の認定証の写し
  • 他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であって、委託しようとする産業廃棄物の運搬が、その事業の範囲に含まれるものであることを証する書面

[2] 処分又は再生に係る委託契約書
  • 産業廃棄物処分業の許可証の写し
  • 再生利用に係る環境大臣の認定証の写し
  • 広域的処理に係る環境大臣の認定証の写し
  • 無害化処理に係る環境大臣の認定証の写し
  • 他人の産業廃棄物の処分を業として行うことができる者であって、委託しようとする産業廃棄物の処分が、その事業の範囲に含まれるものであることを証する書面

委託契約内容

 契約内容を明確にするため、委託契約は書面により行うことが義務付けられています。委託する回数、量にかかわらず、書面による契約が必要です。書面への記載が必要な事項は以下のようになります。(令第6条の2および規則第8条の4の2)
 法定記載事項が欠如している場合や実際に委託された内容と異なる場合には、委託基準違反として罰則が適用されます。


■契約書の共通記載事項

  • 1. 委託する(特別管理)産業廃棄物の種類および数量
  • 2. 委託契約の有効期間
  • 3. 委託者が受託者に支払う料金
  • 4. 受託者の事業の範囲
  • 5. 委託者の有する適正処理のために必要な事項に関する情報
    • (ア) 性状および荷姿
    • (イ) 通常の保管状況の下での腐敗、揮発等性状の変化に関する事項
    • (ウ) 他の廃棄物の混合等により生ずる支障に関する事項
    • (エ) 日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示に関する事項
    • (オ) 委託する産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その旨
    • (カ) その他、取り扱いに関する注意事項
  • 6. 委託契約の有効期間中に前項の情報に変更があった場合の伝達方法に関する事項
  • 7. 委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
  • 8. 契約解除時の処理されない(特別管理)産業廃棄物の取り扱いに関する事項

■運搬委託契約書の記載事項

  • 1. 運搬の最終目的地の所在地
  • 2. (積替保管をする場合には)積替えまたは保管の場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類、保管上限に関する事項
  • 3. (安定型産業廃棄物の場合には)積替えまたは保管の場所において、他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項

■処分委託契約書の記載事項

  • 1. 処分または再生の場所の所在地、処分または再生の方法および処理能力
  • 2. 最終処分の場所の所在地、最終処分の方法および処理能力

3者契約の禁止

 排出事業者が、処分業者の処理能力等を確認することなく、収集運搬業者と処分業者を含めた3者間での契約を結ぶことは、いわゆる3者契約にあたり、法はこれを禁じていると解されています(法第12条第3項)。廃棄物の処理を適正に行い、金銭の流れを透明にしてそれぞれの業者に適正な料金を支払うためにも、排出事業者は収集運搬業者と処分業者のそれぞれと個別の契約(2者契約)を結ぶ必要があります。
 ただし、収集運搬業と処分業の両方の許可を持つ業者との契約の場合には、収集運搬と処分を同一の業者が受託するので、これを1つの契約書にまとめても差し支えありません。


再委託の禁止

 再委託とは、排出事業者と当初に委託契約を結んだ処理業者が、受託した廃棄物の処理を他の者に委託することです。法は再委託を原則として禁止しています(産廃:法第14条第10項前段、特管産廃:法第14条の4第10項前段)。
 再委託することで産業廃棄物処理の責任の所在が不明確になり、ひいては不適正処理を誘発する恐れがあるからです。ただし、例外的に以下の場合には再委託が認められております。

[1] 再委託基準に適合した手続きにより実施する場合(令第6条の12)
[2] 受託者が改善命令、措置命令を受けた場合(規則第10条の7)

 再委託は原則として禁止ですので、これらの再委託ができるのは再委託の必要に迫られた例外的な場合を想定しています。したがって、[1] の再委託基準に適合する手続きをとる場合であっても、受託者の車両、施設の故障などやむを得ない事情が生じた場合でないと再委託はできないものと解されています。
 廃棄物処理の委託契約を締結するときは、処理業者としての能力(車両数、施設の能力、人員数)を考慮する必要があります。処理業者は、その能力に見合った量の廃棄物処理に関する契約を行うことが重要であり、再委託を前提とした契約を結ぶことはできません。


公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センターより引用

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